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非結核性抗酸菌症についてお話いたします。
非結核性抗酸菌症は、近年、増加傾向にあります。この疾患は進行が遅いという特徴がありますが、一部、急激な進行を示す報告や他の感染症を合併することで急速に肺炎が悪化することが問題となっています。気を付けるべきは、2~3か月毎のレントゲン検査で増悪を見逃さず、悪化したときは原因を同定し、それに対する治療を行うことです。
症状:咳(せき)、痰(たん)、血痰(無症状もあり)
原因:土壌などに存在する非結核性抗酸菌の気道感染
診断:採血、胸部レントゲン、喀痰検査
治療:経過観察や内服治療、時に外科的治療
詳細:
非結核性抗酸菌症は結核の仲間で種類も多く、それぞれの治療も異なります。
以下の特徴があります。
①人から人へ感染しない。
②基本的に進行が遅い(年単位で進行)。
③内服治療があるが、効果が低い。
非結核性抗酸菌症のほとんどは、アビウム菌です。上記の3つの特徴は、アビウム菌の特徴と言って良いでしょう。このアビウム菌は約3種抗菌剤(約10錠/日)を同時に内服し、2年間以上の内服継続が基本となります。この治療の問題は、副作用です。副作用は高齢になるほど出現しやすいため、高齢者への治療は病状が悪化しない限りは避けるべきと考えます。しかし、進行が遅いですがほぼ全ての方が年単位で進行し、一部の患者さんは5~10年で肺の広範囲に病勢が広がり喀血や呼吸困難を日常的に認めるほど進行してしまいます。。よって、レントゲン検査や採血検査による経過観察が重要であり、特に60歳未満では将来的にある程度の進行が確実なので、内服治療を早めに一度されることをお勧めしています。一方、60歳以上の方の治療は進行の速さにより治療をするべきかは判断をしています。特に進行が速いときは、非結核性抗酸菌症によるものか他感染症の合併かを判断し治療を行います。
症状は、咳(せき)や痰(たん)が主に認められますが、気管支の炎症が悪化すると血痰や喀血も認められます。さらに進行すると、呼吸困難を認めますが、進行期は非結核性抗酸菌症による炎症のみではなく、あらゆる細菌の合併により発熱や痰の増加を認めます。呼吸困難の出現は、日常生活の制限が顕著となりますため、在宅酸素導入などの治療が必要となることもあります。
原因は、土壌や不衛生な水回り(シャワーなど)に多く認められる抗酸菌が気道感染をしたと考えられれています。また、やせ型の女性に多く、気管支の走行も影響していると言われています。ガーデニングなどに注意は必要ですが、マスクや手袋をして清潔に作業をしていただければ制限はありません。
診断は、レントゲン検査、採血検査、痰の検査や気管支鏡検査で行います。特に、鑑別が必要な疾患は結核です。結核は、伝染性があり進行も速いことから注意が必要です。ただし、結核や非結核性抗酸菌症の治療経験がある医師が診断する場合は、画像診断で鑑別が可能なことがほとんどです。
治療は、年齢や体重により異なりますが、8~10錠の内服を日本では2年継続することが推奨されています。ただし、治療は若年~中年者は積極的に行いますが、高齢者は進行が速い時のみ行います。それは、治療効果がやや低く、それに比べ副作用がやや多いからです。副作用には、肝障害、視力障害や胃腸症状が主です。肝障害は採血検査、視力障害は視力検査で発見は可能です。治療期間中は、当初は1~2週間毎、安定期は3~4週間毎の外来診察で副作用の出現に備えます。治療期間は2年と書きましたが、実際には副作用や治療疲れで早期に治療を終了することもあります。短期でも治療効果を認めることも多く問題はございません。若年で、局所に限局し進行が速い場合や空洞を伴うときは積極的に外科的治療を行いますがそのような患者さんはほんの少数に限られます。
非結核性抗酸菌症の問題は、他の感染症を合併するとで急速に進行することです。真菌(カビ)や一般的な肺炎を引き起こす細菌の合併で炎症が増悪し、短期間に肺が広範囲に荒廃してしまう事があります。これは、非結核性抗酸菌症と合併しやすい気管支拡張症や肺の空洞病変に他の感染症が合併することが原因です。レントゲン検査で確認できる気管支拡張症や空洞を伴うときは、厳重に炎症の程度を観察し、悪化時は真菌(カビ)や細菌合併を疑い治療も速やかに行うことが重要です。
まとめ:
①年齢や背景によって、治療をするべきか否かを判断しなくてはいけない感染症です。
②若年者は、軽症でも治療を推奨します。高齢でも、進行が速いときは治療を推奨します。
③非結核性抗酸菌症に合併した他の細菌や真菌(カビ)の感染を見逃さず、合併を疑うときはレントゲン検査、採血検査や気管支鏡検査で診断を行い、合併した感染症に対する治療を行うことが重要です。
医療関係の方々へ:
非結核性抗酸菌症について当院では積極的に診察と治療を行っています。非結核性抗酸菌症の進行は遅いことが多いです。しかし、気管支拡張症や肺野に空洞を伴う場合は、アスペルギルス症や一般細菌の感染を合併し、急速に進行してしまうことも少なくありません。肺野の病変の進行を確認したときは、非結核性抗酸菌症の増悪以外に、他の感染症の合併も考慮した治療が必要です。
採血検査や画像診断では診断が難しいこともあり、気管支鏡検査によって診断が確定する場合もございます。当院にご紹介いただければ積極的に診断と治療をいたします。
【用語】
在宅酸素:酸素を経鼻で吸入することです。慢性的に呼吸苦を認める方に使用します。
気管支鏡検査:胃カメラのようなファイバースコープを用い、気管支内を観察します。同時に、肺や気管支の組織や細菌の採取も可能です。春日部市立医療センターなどの病院施設で施行します。